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多様性と変化で、自律的に成長する強い法務チームをつくる

多様性と変化で、自律的に成長する強い法務チームをつくる

昨今、チームビルディングにおいては、社会の変化に対応できる組織を構築することの重要性が論じられていますが、これは法務部門においても例外ではありません。そこで本Sessionでは、横河電機で法務部長を務める髙林氏に、

などについてお話いただきました。


Profile

目指すのは「プロアクティブなSolution Provider」

私は法学部卒業後に横河電機に入社しました。国際法務を中心に従事し、法務部歴は26年となります。2018年からは法務部長も務めています。

私が法務部長として目指してきたのは、活性化した組織(楽しく仕事ができる環境)、チームとしてのアウトプットの最大化を目指す組織、自律的に動く組織、自己成長する組織、すなわち側で見ているだけでわくわくする組織です。

法務責任者としての理想は、よい意味で「よきにはからえ」との指示のみで業務が回る自律型の組織です。

過去の日本本社の法務は、最終的に決まったことを書面にする「リアクティブな代書屋」のイメージがあったと思います。私がメンバーと共有しながら目指す法務組織の姿は、「プロアクティブなSolution Provider」です。すなわち、リーガルテック等で効率化できる部分はどんどん効率化し、新たにできた時間は人間の知恵が必要な面白いことに使い、プロアクティブにビジネスに関わっていていく——。そんなイメージのチームです。

横河電機法務部の特徴

当社は1915年に創業し、2021年に創業106年を迎えました。当社製品は石油・ガス・化学といったプラントの連続運転・安全運転に関わる設備であるため、30〜40年と安全に稼働することを期待されています。

そこで2021年に、「Yokogawa’s Purpose:測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」を発表しました。当社の計測する力、計測したデータを読み解き最適なオペレーションを提案する力、さらにはサプライチェーン全体の最適化につなげていく力によって、価値の共鳴を目指していくことを示しています。

売上の7割を海外で創出する当社グループでは海外9つの地域統括子会社にIn-house Lawyerを配置しています。

本社である横河電機法務部は、Headquarters機能と国内子会社を含む日本の法務機能を受け持っており、2021年10月現在、男性8名・女性9名の17名体制(このうち、管理職は男性5名・女性4名)で活動しています。若干管理職の比率が高いのは、中途採用において即戦力を求めてきたことに起因します。

また、17名中11名が転職での入社です。17名中13名の平均横河電機歴は「2年」で、当社法務部の歴史から見ても異例の短さです。

当社法務部は共働きの方が多いのですが、コロナ禍においては緊急事態宣言発令の有無にかかわらず原則在宅勤務としており、小さなお子さんのいる社員もフレキシブルに働けるようになりました。男性社員も家で仕事をしながら育児を行えるようになったため、男性社員のほうが就業時間に制約が出たりしています。

当社法務部のオペレーションでは、ますます性別は関係なくなっているといえます。

他業界を経験した法務人材を採用する3つのメリット

自社ビジネスを支援していく立場にある法務部としては、そのときどきの事業変革に合わせて・あるいは変化に先んじて、人材をそろえていく必要があります。こうした視点で中途採用を行った結果、当社法務部には同業の電気機器業種から転職してきた人はこれまでおらず、多様な人材がそろっています。他業界の法務経験者を積極的に採用することのメリットは3つあります。

まず、異なる常識・文化を持った人材が入ってくることで、既存メンバーの視野が広がります。自分が転職することなく、多様な常識に触れられることはとても幸運なことです。

次に、現在の組織のビジョン・方向性にマッチした人材を採用することができます。

そして、我々の顧客であるビジネス側の変革ベクトルに合わせた形で、必要な人材をそろえ、組織力を強化していくこともできます。

他方デメリットもあります。たとえば、当社の事業や業界特有の慣行などを理解するのに、ある程度の時間を要する点です。そのため最初は業界に精通している社員が伴走してサポートする必要があります。

しかし、それでも中途採用などで多様な人材を集めるメリットのほうが圧倒的に大きいです。変革活動とともに多様化が進んだ当社法務部には、コミュニケーションの活性化、スピード感・積極性・自主性の向上がもたらされました。また、横河電機歴が浅い人材のためにナレッジを共有しようとITを用いた業務の見える化も進みました。私自身も、他社で様々な経験を持つ方々と意見交換することでアイデアが深まり、自信にもつながっています。

以前の当社法務部は昔ながらの属人的な個人主義の傾向がありましたが、VUCAの時代にグローバルに戦っていくには、個人の力だけでは太刀打ちできません。

そこでここ数年間は組織力をより強化したいと考え、組織プレイを常に意識してきました。書類系の法務業務は順次AIに置き換わっていくと思います。しかし、人間にしかできない複雑な判断を必要とする業務は残るはずなので、高い付加価値を提供できる仕事の仕組み、組織づくりが求められます。

このような法務組織の「中からの組織変革」を「アウトプットの質・量の向上」につなげ、さらには我々法務機能を社内のステークホルダーに効果的に活用してもらうことで、最終的に「企業価値向上への貢献」につなげていく。こうしたサイクルを実践していきたいと思います。

「変化に対応できる強い法務チーム」とは

最後に、「変化に対応できる強い法務チームとはどのようなチームか」について考えてみたいと思います。

そもそもなぜ変化に強い組織が必要なのか——。私は、諸先輩方が発展させてきた法務チームを次世代・次々世代のメンバーに引き継ぐためだと思っています。10年後・20年後のチームが盤石で、サステナブルで、魅力的な組織として発展していけるよう、新たな時代の変化に耐えうる組織の基盤をつくっていきたいと考えています。加えて、いつ何があってもおかしくない時代、個々のメンバーにもしなやかに生き抜く強さが必要です。強い組織は、それを構成する個々人も自律し、強くなるはずと考えています。

では、このような組織はどんな特徴を有しているのでしょうか。私は、以下の5つだと考えています。

  • 変化を感じ取り、将来を予測して備え、先取りできる
  • しなやかさ(=「変化」や「多様性」への寛容)がある
  • 組織の目的やステークホルダーの期待からブレない
  • 延長線上ではなく、原点に戻る
  • 個人と組織が自律的に動く

なかでも「多様性」は重要です。その理由はとても単純で、私自身が自分のセンス・知識に自信がないからです。だからこそメンバーの力を借りたいと思っています。自分と同じ感覚のメンバーが集えば心地よいかもしれませんが、組織としては怖いです。多様性への寛容度が上がれば、外部の変化にも対応できるでしょう。

まとめると、今後目指すべき「強い法務チーム」の姿とは「多様な強みを活用して組織を変革し、変化する外部環境に、しなやかに、むしろ楽しみながら対応・成長する自律型組織」です。

我々法務部も、そんなチームへと成長していきたいと考えています。

▼「LegalForce Conference 2021」の様子は、YouTube上でも配信しています。ぜひご覧ください。



<この記事を書いた人>

Nobisiro編集部

AI法務プラットフォーム「LegalOn Cloud」を提供するLegalOn Technologiesが運営する、法務の可能性を広げるメディア「Nobisiro」編集部。の法務担当者の日々の業務に役立つ情報を発信しています。

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