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契約書における甲乙の使い方とは?使わない方法についても解説

契約書における甲乙の使い方とは?使わない方法についても解説

甲乙」は、契約書において当事者を指す一般的な略称です。日本では、甲乙の略称が多くの契約書で使われており、商慣習上も馴染みのあるものです。しかし、略称の表記について法律上のルールはありません。また契約書の形態によっては、甲乙の略称を使わないものも増えています。

このページでは、契約書での甲乙の使い方と、使うことのメリット・デメリット、甲乙を使わずに表記する方法について解説します。

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契約書における甲乙とは

甲乙は、契約書では当事者の呼び名・略称として使われます。契約書における甲乙は単に記号として使われていて、それ自体に意味はなく、例えばアルファベットで「A」「B」などと表記したとしても契約書の効力は変わりません。

そもそも甲乙とは、「十干」(じっかん)に由来します。古代中国では10日または10年を1つの単位として周期があると考えられており、10日・10年を構成するそれぞれの日や年を呼ぶときに使ったのが十干です。

十干には、甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)の、合計10の漢字があります。

契約書における甲乙の基本・使い方

では実際に、甲乙は契約書でどのように使われているのでしょうか。基本の使い方を確認しておきましょう。

使い方について法律上の決まりはない

当事者の略称について法律上の定めはないため、契約書で甲乙を使用することは必須ではなく、使い方についても細かい決まりはありません。

ただし日本では甲乙を使うケースが多く見られ、取引先も慣れ親しんでいることが多くあります。一般的ではない略称や、慣習的な甲乙の使い方とは違う方法で記載してしまい、取引先の混乱を招くなどの事態は避けたいところです。

法律上の決まりはないとはいえ、一般的な甲乙の使い方を把握しておくことは重要といえます。

慣習的に甲を上、乙を下とすることが多い

甲乙は、基本的に記号に過ぎないため上下関係は本来ありません。ただし、一般的な感覚として甲の方が上位と捉えられることがあります。そのため顧客を甲、事業者を乙とするなどして、上下関係を意識することが多いようです。
例えば賃貸なら貸主、業務委託なら委託側など、慣習的に上位の立場とみなされる側が甲になりやすいと考えられます。

契約の当事者が3者以上でも使用できる

3者以上が関係する場合は、甲乙の他に「丙・丁・戊…」と、十干の漢字を使用します。

例えば、賃貸用不動産を甲から借りる当事者が2名いる場合、「貸主甲、借主乙および丙は、以下の通り同意する」とします。

英文契約書では記号化しないのが普通

英文契約書では「A」「B」などの記号化はせずに当事者を表記するのが一般的です。

一つの方法は、固有名詞を分かりやすく省略する方式です。

名前ではなく契約上の立場で表記することもあります。例えばSeller(売主)とBuyer(買主)、Lessor(貸主)とLessee(借主)などです。

契約書の種類によって違う略称が使われることがある

日本でも契約書の種類によっては、甲乙ではない略称が使われることがあります。代表的なものは以下の表の通りです。

※表あり

このような甲乙以外の表記は、作成時に当事者の表記の誤りを防止でき、誰が何をするのか明確で読みやすいなどの理由で使われることも多いようです。

契約書で甲乙を使うメリット

契約書で当事者の略称として甲乙を使うことにも、いくつかのメリットがあります。主な2つの点を確認しましょう。

文章を短くシンプルにできる

甲乙を使う大きなメリットは、契約書の文章をシンプルにすることができ、契約書作成の作業を効率化できる点です。

契約書の文章中で毎回、個人の名前や会社の正式名称を表記していると一文が長くなり、契約書全体の分量も多くなってしまいます。甲や乙という表記は1文字で済むので、使うことで主語が短くなり、契約書全体を短くシンプルにできます。

また一度作成した契約書をひな形として使用し、別の契約書を作成する際にも甲乙表記は便利です。甲乙が指す当事者を変更すれば、同様の別の契約書として書き換える作業を簡単に完了できます。

一般化しており慣れている人に読みやすい

甲乙を使った契約書の書き方は、日本では一般的であり、法務などの業務に従事する専門家などの「慣れている人」にとって読みやすいというメリットがあります。

契約書で甲乙を使うデメリット

これに対して、契約書の略称に甲乙を使うことにはデメリットもあります。主な2つのデメリットを把握しておきましょう。

相手に分かりにくいことがある

契約書に慣れていない人には、甲乙を使う文章が読みにくいことがあります。

特に長文の契約書の場合、甲と乙のそれぞれが誰を指すのか、分かりにくさを感じることもあるでしょう。

専門家には、甲乙は便利な場合が多いものの、契約書を読む人は専門家とは限りません。特に契約の当事者は、法律の専門家ではないことが多くあります。当事者にとって「読みにくい」「分かりにくい」ということが、契約内容の誤解や認識不足につながり、それがトラブルの原因になる可能性もあります。

当事者が契約書の内容を正確に理解できるようにするため、既に紹介したような「会社の略称」や、「当事者の立場に着目した略称」を使う方がよい場合もあります。

主語を間違えるミスが発生しやすい

契約書の作成時に甲と乙を入れ間違えて記載してしまうミスが発生しやすくなることも、甲乙表記を使うデメリットです。

甲乙を入れ替えてしまい、主語が変わることは、契約書内容を大きく変えることになりかねません。例えば、秘密情報の不開示が片方の当事者の義務である場合、甲の義務と書くべきところを「乙の義務」と誤ってしまうと規定の意味がなくなります。

この場合、例えば「受領当事者は、秘密情報を第三者に開示してはならない」など主語が明確な表記にすると、作成時にミスが起こりにくくなります。

契約書で甲乙を使うデメリットを避ける・解消する方法

契約書で甲乙を使うことによるデメリットを避けるために有効な、2つの対処法があります。「甲乙以外の表記」を使うことと、「契約書審査」を徹底することです。それぞれの方法について、以下に詳しく解説します。

甲乙以外の表記を使う

先ほども少し触れましたが、「区別しやすい略称」を用いることで、甲乙を使うことを回避できます。例えば「甲・乙」→「売主・買主」とする方法です。

こうした記載なら、略称が何を指すのかがイメージしやすく、作成時も甲乙と比べて取り違えが起こりにくくなります。契約書を読みなれていない人にも読みやすくなるでしょう。

契約書審査の体制を強化する

契約書の作成時におけるミスを防ぐには、契約書をチェックする「契約書審査」の体制を強化することが有効です。
例えば契約書レビューの支援ツールなどを導入し、契約書審査をより高い精度でできるようにするという対策ができます。

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<この記事を書いた人>

Nobisiro編集部

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