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法務リスクとは? 具体例や回避方法などをわかりやすく解説

法務リスクとは? 具体例や回避方法などをわかりやすく解説

「法務リスク」とは、法令違反・契約違反・第三者に対する権利侵害などにより、企業が損害を被るリスクを言います。これらの違反・権利侵害を犯し、法務リスクが顕在化すると、企業は行政処分・刑事罰・損害賠償などによって大きな損害を被る可能性があるので要注意です。

法務リスクの顕在化を回避するには、法令に関する正しい知識を備えるとともに、契約書のレビュー・管理をきちんと行うことが大切です。契約交渉の段階で不適切な条項を洗い出し、相手方に修正を求めながら問題を解決することが、法務リスクを最小化することにつながります。

契約書のレビューに当たっては、目視によるチェックに加えて、サポートツールを活用した機械的なチェックを並行して行うのが効果的です。

今回は法務リスクについて、具体例や回避方法などをわかりやすく解説します。

(※この記事は、2022年12月22日時点の法令等に基づいて作成されています)
※この記事では、法令名を次のように記載しています。
・独占禁止法…私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
・景品表示法…不当景品類及び不当表示防止法

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法務リスクとは

「法務リスク」とは、法令違反・契約違反・第三者に対する権利侵害などにより、企業が損害を被るリスクを言います。

企業が安定的に事業を運営するためには、経営者と法務担当者が連携して、法務リスクをコントロールしなければなりません。

法務リスクの具体例

法務リスクには、主に法令違反のリスク・契約違反のリスク・第三者に対する権利侵害のリスクがあります。それぞれ具体的にどのようなリスクがあるのか、考えられる例を紹介します。

法令違反のリスク

企業は、各種法令を遵守して事業を運営しなければなりません。法令違反を犯すと、刑事罰や行政処分の対象になる可能性があるので要注意です。

例として、独占禁止法・景品表示法・労働基準法に違反する行為と、違反行為に対するペナルティを紹介します。

独占禁止法違反

独占禁止法では、市場における公正・自由な競争を確保するため、以下の行為が禁止されています。

  1. 私的独占
    他の事業者を市場から排除し、または支配して、事業者間の競争を実質的に制限する行為です(独占禁止法2条5項、3条)。
  2. 不当な取引制限
    事業者間で話し合って、商品・サービスの供給量・価格などを事前に取り決める行為です(同法2条6項、3条)。
  3. 事業者団体による競争制限行為
    事業者で構成される事業者団体が主導して、事業者間の競争を実質的に制限する行為です(同法8条)。
  4. 公正・自由な競争を阻害し得る企業結合
    M&Aによる企業結合のうち、実質的に見て公正・自由な競争を阻害し得るものが禁止されています(同法9条以下)。
  5. 独占的状態
    規模が年間1,000億円超の市場において、新規参入が困難な独占・寡占の状態が発生している場合、規制の対象になります(同法2条7項、8条の4)。
  6. 不公正な取引方法
    事業者間の公正な競争を阻害し得る、不公正な方法によって取引を行うことが禁止されています(同法2条9項、19条)。

独占禁止法違反の行為は、公正取引委員会による排除措置命令(または競争回復命令)や課徴金納付命令の対象となります。
また、悪質な私的独占・不当な取引制限や、確定した排除措置命令等に従わない行為については、刑事罰の対象となる可能性もあります

景品表示法違反

景品表示法では、主に広告・商品パッケージなどにおける「優良誤認表示」と「有利誤認表示」が禁止されています。

  1. 優良誤認表示
    商品やサービスの品質・規格その他の内容が、実際のものまたは競合他社のものよりも著しく優良であると示し、不当に一般消費者を誤認させる表示です(景品表示法5条1号)。
  2. 有利誤認表示
    商品やサービスの価格その他の取引条件が、実際のものまたは競合他社のものよりも著しく有利であると示し、不当に一般消費者を誤認させる表示です(同条2号)。

景品表示法違反の行為は、消費者庁による措置命令や課徴金納付命令の対象となります。さらに、措置命令に従わない場合には、刑事罰の対象となる可能性もあります。

労働基準法違反

労働基準法では、労働条件に関する最低ラインを定めるため、一例として以下の行為が禁止されています。

  1. 違法な長時間労働をさせること
    法定労働時間(1日8時間・1週間40時間)を超えて労働者を働かせることは、原則として禁止です(労働基準法32条)。
    労使協定(36協定)を締結すれば、例外的に法定労働時間を超えて働かせることができますが、労使協定および労働基準法の上限時間を超えると違法になります(同法36条)。
  2. 残業代の不払い
    残業(法定内残業・時間外労働)、休日労働、深夜労働に対しては、所定の割増率を適用した残業代を支払わなければなりません(同法37条)。残業代の不払いは、労働基準法違反に当たります。
  3. 雇用時に正しい労働条件を明示しないこと
    使用者が労働者を雇用する際には、労働条件を明示しなければなりません(同法15条1項)。労働条件を明示しない行為や、虚偽の労働条件を伝える行為は労働基準法違反です。

労働基準法違反の行為は、労働基準監督署による行政指導のほか、刑事罰の対象になる可能性があります。

契約違反のリスク

契約違反を犯した場合、企業は相手方に対して債務不履行責任を負うことになります。具体的には、損害賠償・期限の利益喪失・契約の解除などのリスクを負うので要注意です。

損害賠償(債務不履行)

契約違反を犯した当事者は、それによって相手方に生じた損害を賠償する義務を負います。

債務不履行に基づき発生する損害の例

・秘密保持契約に基づく義務に違反し、秘密情報を第三者に流出させた結果、相手方においてトラブル対応のコストや、社会的評判の低下などの損害が発生した。

・売買契約に基づいて買主に引き渡した目的物に欠陥があり、買主において修理費用などの損害が発生した。 ・業務委託契約(孫請け)に基づいて受託制作すべきソフトウェアにつき納品が遅れたため、相手方が元請事業者から契約を打ち切られる損害が発生した。

契約違反によって発生する損害は、思いもよらず高額になるケースもあるので要注意です。

期限の利益喪失

「期限の利益」とは、一定の期日が到来するまでの間、債務を履行しなくてよい利益のことです。例えば金銭消費貸借契約において、返済期限まではお金を返さなくてよい利益を「期限の利益」といいます。

債務不履行を起こしてしまうと、契約に基づく期限の利益は消滅し、相手方から残債の一括支払いを求められる可能性が高いです。一挙に予定外の支払いを強いられることになれば、会社の破綻に繋がりかねないでしょう。

契約の解除

契約違反を犯すと、相手方から契約を解除されてしまう可能性があります。

特に、会社にとって重要な取引を打ち切られてしまうと、会社にとって大きな打撃になるでしょう。また、原状回復などに関して臨時の支出が発生し、会社の経営が傾いてしまうおそれもあります。

第三者に対する権利侵害のリスク

契約関係にない第三者に対しても、会社が損害を与えた場合は不法行為責任を負います。
基本的には損害賠償責任を負うことになりますが、名誉毀損の場合には謝罪広告が命じられることもあります。

損害賠償(不法行為)

不法行為をした企業は、それによって被害者に生じた損害を賠償する義務を負います(民法709条)。

不法行為に基づき発生する損害の例

・許諾を受けずに他社の特許技術を利用して商品を開発・販売し、特許権者に損害を与えた。

・自社が管理しているビル設備の整備不良により、利用者が事故に遭ってケガをした。

不法行為に基づく損害賠償も、思いがけず多額に及ぶ可能性があるので注意が必要です。

謝罪広告

契約関係にない第三者の名誉を毀損した場合、不法行為に基づき、裁判所に謝罪広告を命じられる可能性があります(民法723条)。

謝罪広告を命じられた場合、広告掲載の費用がかかる上に、会社のレピュテーションに大きな悪影響が生じることは避けられないでしょう。

法務リスクの顕在化を回避する方法

法務リスクの顕在化を回避するには、法令についての正しい理解と、契約書の適切なレビュー・管理を行うことが重要です。

法令について正しい理解を備える

法令違反のリスクを回避するには、会社が遵守すべき法令のルールを把握し、その内容を正しく理解する必要があります。定期的に従業員研修を実施するなどして、社内全体にコンプライアンス意識の浸透を図りましょう。

特に、ハラスメントと過重労働(違法な長時間労働)は、労働者の心身を著しく害してしまうおそれがある上に、会社のレピュテーションに大きな悪影響を及ぼす懸念があります。これらの問題については、とりわけコンプライアンス意識を強く持つべきです。

契約書のレビューをきちんと行う

契約違反のリスクを回避するには、契約の内容を十分に把握し、その遵守に努めなければなりません。

またそれ以前に、契約を締結する段階で、自社にとって遵守が難しい条項は削除しておく必要があります。契約交渉を進める中で、契約書の内容を隅々までチェックし、不当に不利益な条項や曖昧な条項が含まれていないかを確認しましょう。
目視によるチェックに加えて、サポートツールを用いた機械的なチェックも併用すると非常に効果的です。

過去の契約書の内容を整理・把握する

過去に締結した契約書の内容を把握していないと、気づかないうちに契約違反を犯す可能性があります。過去の契約書は日頃から整理し、必要な時にいつでも調べられるようにしておきましょう。

過去の契約書を適切に管理するためには、充実した機能を備えたサポートツールを活用することをお勧めいたします。

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<この記事を書いた人>

Nobisiro編集部

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