全部事項証明書とは?
まず、全部事項証明書とはどのような書類なのかを解説します。
全部事項証明書は法務局が発行し、不動産の所在や登記の権利関係を証明する書類です。過去の履歴(所有権の移転、抵当権の設定・抹消など)も全て記載され、内容に嘘偽りがない、真正なものであることを明かします。
書類のサイズはA4で、法務局専用の薄い緑色の用紙を使用。最後の部分には法務局登記官の押印が入っていて、内容が確かなものであることを証明しています。
全部事項証明書と登記事項証明書との違い
全部事項証明書に似た書類に登記事項証明書がありますが、違いを説明しておきましょう。実は、まったく別な書類というわけではありません。
登記事項証明書の1つが全部事項証明書です。登記事項証明書といった場合、登記の証明書すべてを含みます。
全部事項証明書以外では、現在事項証明書も登記事項証明書にあたるのです。
全部事項証明書と現在事項証明書の違いは以下のようになっています。前者には登記の履歴全て、過去から現在までの記録が記載されているのに対して、後者は現在の記録のみを記載。対象が限られています。
全部事項証明書と謄本の違い
続いて、全部事項証明書と謄本の違いを説明しましょう。書類の内容自体はどちらも変わりません。
違うのは、全部事項証明書がコンピュータが管理しているデータを出力したものであるのに対して、謄本が紙管理されたものをコピーしたものであることです。
全部事項証明書はどんな場面で必要になる?
全部事項証明書が必要になる場面は以下のような時です。
- 不動産に関する税金の手続きをするとき
- 不動産取引をするとき
- 銀行で手続きをするとき
税金の手続きでは、特に特例の適用を受けたいときに全部事項証明書が必要になります。築年数や専有面積などの要件確認のためです。
不動産の売買をするときは、権利関係を明確にしなければいけませんから、全部事項証明書がなければ取引が成立しません。
銀行での手続きでは、担保不動産の確認、住宅ローンの借り換えなどの場面で必要になります。
全部事項証明書が必要になる場面でも、原本を準備しないといけない時とコピーで構わない時があるほか、提出が不要でも、不動産の特定をするときに使うこともあるでしょう。
全部事項証明書の取得方法
全部事項証明書の取得方法を解説します。取得方法は3種類ありますが、それぞれの方法を解説しましょう。
取得する際に必要なもの
全部事項証明書を請求する際に必要なものはありません。何も自分で準備しなくても、請求・取得ができます。身分証明書や住民票、戸籍などの本人確認書類を提出する必要はありません。
ただし、請求する際に踏まなければいけない手続きがあるので、項目別に紹介します。
法務局で取得する方法
全部事項証明書は法務局の窓口で請求・取得できます。窓口で請求する際は、登記事項証明書交付請求書に必要事項を記入し、地番を確認し、印紙を購入しなければいけません。
地番は不動産の所在地を管理する番号です。地番が確認できないと、全部事項証明書は交付されませんから。準備しておいてください。不動産の権利証、登記識別情報、固定資産税の納付書などで確認する方法のほか、法務局に問い合わせて教えてもらうことも可能です。
全部事項証明書の発行手数料は印紙で支払うので、購入します。
申請後は、ふつう10~20分程度待つだけで取得できるでしょう。どこの法務局で申請しても構いません。管轄というものはないので、全国の全部事項証明書を取得できます。
オンラインで取得する方法
法務局が遠い、訪問する時間が取れないなどの事情があるのなら、オンラインで全部事項証明書の申請・取得ができます。方法は2つです。「登記ねっとかんたん証明書請求」を利用するか、「申請用総合ソフト」を利用するか。
前者はWebブラウザから、後者は専用アプリをパソコンにインストールして使います。前者の方がシンプルで使いやすいです。
オンラインで全部事項証明書の請求をする場合は、オンライン専用システムへの会員登録をし、地番を確認し、手数料納付方法を選びます。納付方法はインターネットバンキングから、あるいはATM払いのいずれかです。手数料の額は窓口請求よりも安くなっています。
オンラインで全部事項証明書を請求した時は、法務局の窓口か郵送で受け取ってください。
郵送で取得する方法
郵送による全部事項証明書の請求・取得もできます。郵送する場合は、まず法務局のホームページから登記事項証明書交付請求書をダウンロードしましょう。
次に必要事項を記入して、印紙を貼付し、返信用封筒を含めて送ります。すると、返信用封筒に入った全部事項証明書が送られてくるでしょう。
法務局が近くにない、オンラインが利用できないなどの場合は、郵送は便利な手段ですが、いつ返信されるかが分かりません.。1~2週間待つこともあるでしょう。
申請書の書き方
全部事項証明書の申請書を登記事項証明書交付請求書と言いますが、書き方を解説します。
▼登記している当事者(成年後見人など)が申請する場合
画像引用元:東京法務局|登記事項証明申請書記載例
▼成年被後見人などの四親等内親族の方が申請する場合
画像引用元:東京法務局|登記事項証明申請書記載例
申請手数料
全部事項証明書の申請手数料は以下のようになっています。
全部事項証明書の見方
取得した全部事項証明書の見方を確認しておきましょう。
表題部と権利部
全部事項証明書の表題部は不動産の特定情報が記載されている場所です。土地や建物に関する詳細な情報が記されています。
権利部は不動産の権利内容を記載した場所。甲区と乙区があり、甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利内容が記されています。
土地の全部事項証明書の見方
土地の全部事項証明書に記載されているのは次のような内容です。
▼表題部
- 所在:対象の不動産の所在場所
- 地番:土地を特定する番号
- 地積:公簿上の土地の面積
- 登記の日付/原因:土地の形状を変えたときの原因と登記日
▼権利部(甲区)
- 順位番号:甲区欄内で登記がなされた順番に合わせて付与される番号
- 登記の目的:登記がされた目的
- 登記年月日/受付番号:登記の受付がされた年月日と法務局が発行した受付番号
- 権利者その他の事項:登記がされた理由と所有者の氏名や住所
▼権利部(乙区)
- 順位番号
- 登記の目的
- 受付年月日・受付番号
- 権利者その他の事項
乙区に応じた内容が記されています。
建物の全部事項証明書の見方
建物の全部事項証明書には次のような内容が記されています。
▼表題部
- 建物の不動産番号:識別番号のこと
- 建物の所在:所在場所
- 家屋番号:建物を特定する番号
- 建物の種類:用途のこと
- 建物の構造:木造や鉄筋コンクリートなど
- 各階の床面積:平面図・図面に基づく床面積
- 登記の日付/原因:登記を受け付けた日と原因
- 表題部の所有者:表題部の登記を申請した時点での所有者
建物(区分所有)の全部事項証明書の見方
建物(区分所有)の全部事項証明書には次のような事項が記されています。
- 専有部分の家屋番号:所在・地番・固有の番号
▼表題部
- 一棟の建物の表示:建物全体の概要
- 敷地権の目的である土地の表示:敷地権の目的になっている土地の概要
- 専有部分の建物の表示:専有部分の概要
- 敷地権の表示:敷地権の概要
まとめ
今回は、全部事項証明書の概要や取得方法などを解説しました。
不動産取引では、不動産の権利関係などを確認する際に全部事項証明書が必要になります。必要になったら、記事で説明した3つの方法のいずれかを利用して、申請・取得してください。
手続きで迷わないように事前に調べた上で、申請しましょう。
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<この記事を書いた人>
Nobisiro編集部
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