契約書を製本(袋とじ)することには、改ざん防止や契印を押す回数を減らせることなどのメリットがあります。
一方で、製本は手作業で行うため、部数が多ければ時間もかかります。どのように効率的に実施するかが課題です。この記事では契約書の製本について、目的と方法、効率化に有効な方策について詳しく解説します。


目次
契約書を製本する目的
「契約書の製本」とは、複数の枚数からなる契約書を一つにまとめ、袋とじなどの方法で体裁を整えることです。製本することは法律上の義務ではありませんが、それでも製本をすることが慣例として定着しています。まずは契約書を製本する「目的」について確認しておきましょう。
契印を押す回数を減らす
製本すると「契印」を押す回数を減らすことができます。
契印とは、契約書が複数枚(2枚以上)ある場合に、それらすべてが一つの契約書であることを明確にするために押印するものです。複数ページにわたる契約書が製本されていない場合、ページとページとの間に双方の当事者でそれぞれ一つずつ契印を押す必要があります。数十枚単位の契約書の場合、契印の押印だけでもかなりの手間がかかってしまうでしょう。
一方、契約書が製本されていれば、裏表紙や袋とじの帯部分にまたがって契印を施すだけで済むため、作業の手間を削減できます。契印の一部が抜けてしまうようなケアレスミスの防止のためにも、製本によって契印の回数を減らすことは重要です。
製本されている契約書の帯部分に契印を押すことで、一つの契約書であるとみなされ、すり替えなどの改ざん・偽装を防ぐことができます。
改ざん・偽造を防止する
改ざんや偽造がしにくい形式で契約書を作成するためにも製本は重要です。契印が押印された製本済みの契約書の場合、破損せずにページを抜き取ることは非常に難しくなります。
ページの一部を抜き取って他の文言に差し替えるなどの改ざんや、署名欄を差し替えるなどの偽造を防ぎ、契約書の信頼性を高めることができます。
契約書を製本する方法
契約書の製本方法はホチキスで契約書を留めて、紙の帯や製本テープを貼り付ける方法が一般的です。詳しい手順を以下に解説します。
契約書をホチキスで留める
まずは印刷した契約書をまとめてホチキスで留めます。ページの順番に間違いがないよう、ホチキスで留める前に確認しておくことを忘れないようにしましょう。
ホチキスは左端に留めますが、契約書の破損防止のため、紙の端ぎりぎりに留めることは避けます。「端から5mm程度」を目安としましょう。
留める位置には特に決まりはありませんが、上部・中部・下部と3か所止めておくと、安定して留めることができます。
帯・製本テープを貼り付ける
次に、ホチキスの針を隠すように紙や製本テープでカバーします。ホチキスだけでも契約書をまとめるには十分ですが、前述のように契印を減らし、見た目をよくするためにも、紙の帯や製本テープでホチキスを隠す処理をすることが大切です。また帯・テープでホチキスを隠しておけば、背表紙を剥がす際に契約書が破損するため、不正を防止することにもなります。
紙の帯・製本テープを作成する手順について、以下に説明します。
紙の帯を使う場合
紙の帯を使う場合の手順は以下の通りです。
- 帯の作成
- のり付け
- 帯を折って貼り付け

まずは「帯の作成」です。上図のように中心部分を他の部分より長く残して紙をカットして、帯となる紙を作成しましょう。実際に契約書に合わせて縦の長さを確認し、幅を計って3つ折りにして、帯にする紙を切り取ります。
A4の契約書を製本する場合、縦はB4サイズの縦の長さを目安にし、横幅はホチキスが隠れる長さの3倍ほどを目安としましょう。ただしページ数が多い契約書の場合、厚さの分だけ幅を大きめにカットするのがポイントです。B4サイズのコピー用紙から帯を切り取るようにすると、縦横ともカバーできます。

次に、帯の「のり付け」です。上図のように、帯の3分の1だけにのり付けをして、ホチキスを隠すように貼り付けます。

次に上図のように帯を折り返してください。その後、契約書からはみ出した部分にのり付けをして背表紙側に折り返し、貼り付けます。
製本テープ(袋とじ)の場合
製本テープの場合は、紙の帯を用意する必要がないので、紙の帯より効率的に製本できます。製本テープを使ってホチキスを隠す手順は以下の通りです。
- 製本テープをカットする
- 製本テープの剥離紙を半分はがして契約書に貼り付ける
- 製本テープの余った部分をカットする
- 残りの剥離紙をはがし、製本テープを折り返して貼り付ける

まずは製本テープのカットです。契約書の長さ(A4なら297mm)プラス3〜5センチほどで製本テープを切っておきます。

次に、製本テープを縦方向に二つ折りにして、半分だけ剥離紙をはがします。いきなり全部の剥離紙をはがしてテープを貼ると、テープにしわが入ったり、テープが契約書とずれてしまったりしがちです。最初は半分だけはがすようにしましょう。
剥離紙ではがした面でホチキスを隠すようにして、契約書の表紙側を貼り付けます。

上図のように、製本テープの余った部分を四角くカットしてから、残りの剥離紙をはがしましょう。次に紙の帯と同じ要領で製本テープを折り返し、契約書の裏表紙側のホチキスを隠すように貼り付けます。
契印を押す
最後に「契印」を押します。契印を押すことは法律で定められたものではなく、押印する場所についても特に決まりはありません。慣例としては、表紙または裏表紙、あるいは表紙と裏表紙の双方に契印を押印します。押印箇所は、下図のように帯や製本テープに重なるように押印するのが慣例です。

契印を押したら契約書の製本は完了です。
契約書の製本について、よくある疑問
表紙・裏表紙は必要?
契約書を製本するために、表紙や裏表紙は必須ではありません。ただし表紙や裏表紙があると、契約書を開かなければ内容が見えないように隠すことができ、体裁が整うというメリットもあります。
業界の慣例や取引先の要望などに合わせて、表紙を作成した方がよいか判断しましょう。
契印と割印の違いは?
割印は、一つの契約書のページ同士ではなく、複数の異なる契約書や書面同士の間にまたぐようにして押印するものです。例えば、原本と写しに割印を押すことによって、原本と写しに関連性があることを証明できます。
契印と割印は、いずれも契約書の改ざん・偽造を防止し、異なるページや書面同士の関連性を確保するために押印します。
どちらも紙をまたぐようにして押印するものであることから、混同されがちです。しかし、契印は「同じ契約書」のページ間の連続性を、割印は「違う契約書(書面)同士」の関連性を確保するという点に違いがあります。
契印・割印に法的効力はあるか?
当事者の印章による契約書への押印には、文書の成立の真正を推定させる効果があります(民事訴訟法228条4項。なお二段の推定につき、最高裁昭和39年5月12日判決参照)。
契印や割印も、当事者の印章による契約書への押印に当たりますので、文書の成立の真正を推定させる効果を生じ得ると考えられます。
ただし、契印や割印を施す契約書については、署名欄にも当事者による押印がなされるのが通常です。したがって、契印や割印そのものにつき、文書の成立の真正を推定させる効果の有無を論じる実益は乏しいと思われます。
上記以外の観点からは、契印・割印によって特に具体的な法的効力が生じるわけではありません。
ただし、契印は各ページが同一の文書を構成すること、割印は複数部の契約書の内容が同一であることにつき、それぞれ証明し得る証拠価値を有します。そのため、紙の契約書を作成する際には、実務の慣例に従って契印・割印を行うのがよいでしょう。
印刷のレイアウトはどうする?
契約書の印刷レイアウトは、一般的な書類と同じように「1ページごと」に1枚の紙に印刷しても問題はありません。
しかし特に枚数が多い際は、A3用紙で2ページを1枚に印刷する「袋とじ印刷」にすると、製本した際にページの入れ違いなどが起こりにくく、仕上がりもきれいです。
A3袋とじ印刷は、Wordの場合、次のように印刷設定の操作を行います。
- ページレイアウトのメニューから「ページ設定」を開く
- 「ページ設定」タブで用紙サイズ(A3)を指定
- 「余白」のタブで印刷の向きを「横」に設定
- 「印刷の形式」から「袋とじ」を選択する
これで袋とじ設定になり、2ページが1枚に印刷されるようになります。A3用紙に印刷して、印刷された面が表になるように二つ折りにし、ページ順に重ねていきます。製本の手順は、この記事で解説した方法と同様です。
契約書を製本する手間をなくす方法
契約書を1通製本するだけなら、慣れれば5分もせずに完了できるでしょう。とはいえ契約書の通数が多くなると、製本だけにかなりの時間がかかってしまいます。手間を省くために、何かよい方法はないのでしょうか。
契約書を製本する手間を省くには「電子契約」の導入が有効です。電子契約を導入すれば、PDFなどの電子データで作成した契約書にシステム上で押印することが可能となります。紙の契約書の作成が不要なので、製本作業をする手間が不要になります。
また(電子契約か否かに関わらず)契約書に印影がなくとも署名があれば法律上は真正に成立したものであると推定されるため、電子押印ではなく電子署名であっても問題ありません(民事訴訟法第228条第4項)。
電子契約のメリットは、契約書の印刷や製本の手間が省けるだけではありません。まず、電子契約の場合は印紙が不要であるため、「印紙税の節約」になることが大きなメリットです。さらに紙の契約書を保管する必要がないため、キャビネットなどの保管場所の確保や維持にかかるコストも削減できます。
契約書作成の効率化のために導入したいツール
契約書を作成する業務は、製本以外にもさまざまな作業があり、工数も多く発生します。契約書作成の業務全体を効率化するために、契約書レビューを支援するツールの導入がおすすめです。
契約書レビューの支援ツールとは、契約書チェックなど、契約書の作成や審査に役立つ機能を持ったデジタルツールです。契約内容の不備やケアレスミスなどの防止になり、契約書の作成業務を効率化できます。
契約書レビュー支援ツール「LegalForce」には、契約書の審査を効率化する様々な機能があります。契約書をアップロードするだけでAIが瞬時にチェック項目を表示し、リスクの見落としや必要条文の抜け漏れが防止できます。チェック項目に表示された内容を参考にすることで、契約書の作成業務の効率化を実現します。
さらに、LegalForceではオプションで電子契約サービスとの連携ができ、LegalForce上にアップロードした契約書の電子締結依頼を相手方に送ることができます。
契約書作成の効率を改善する方法
契約書の製本は、法律で定められたものではないため、その方法についても決まりはありません。とはいえ慣例に合わせた方法で契約書を製本することは、押印する回数を減らすことができる上に、改ざんや偽装の防止にも役立ちます。
契約書の製本をせずに済ませるには、電子契約の導入が有効です。
さらに契約書の審査業務を効率化するために、契約書レビュー支援ツールLegalForceをお役立ていただけます。導入いただくことで、契約書審査の品質と、法務の業務効率を高めることが可能です。


これまでは条文一つひとつを細かく見ながら、過去の契約書やさまざまな資料を突き合わせてチェックしていましたが、LegalForceを使えば瞬時に行えるので、非常に大きな成果を得られています。

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総務部 総務課
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