企業法務は、企業活動における法的なリスク管理に重要なものです。企業法務を充実させることで、コンプライアンスに沿った経営ができ、法令違反や信用性の低下を防げます。
しかし経営者様の中には、「企業法務を充実させるにはどうすればいいの?」といった方もいるでしょう。企業法務を充実させるには、はじめに必要となるスキルを明確化する「スキルマップ」の構築が有効です。
本記事では、企業法務で求められるスキルマップについて解説します。企業法務の強化をお考えの経営者様などは、参考にしていただければ幸いです。
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目次
企業法務におけるスキルマップの対象
スキルマップは、従業員の業務におけるスキルレベルを表したものです。業務に関する能力やスキルを測ることにより、不足している能力の把握・改善、および教育計画の策定をおこないます。求められるスキルは携わる業務によって異なり、評価の対象が変わります。企業法務の場合には、以下の人物が対象です。
- 経営陣
- 管理職
- 企業法務に携わる部署の従業員
評価される項目や求められるスキルレベルは、対象によって異なります。
企業人として求められる基本的能力
企業人として求められる要素としては、以下のようなものです。
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事務処理能力
事務処理能力は、担当案件を正確かつ迅速に処理する能力です。対象ごとに、以下のようなスキルが求められます。
経営陣 | ・会社全体の案件の進捗を把握し、優先順位をつけて指示を出せる能力。 |
管理職 | ・自分のスケジュールの立案・調整・管理だけでなく、部下に適切で迅速な指示を出せる能力。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・担当案件に関わる人の進捗にも配慮しつつ、適切な日程の組み立て・調整をおこない、正確かつ迅速に処理できる能力。 |
自社が展開するビジネスへの理解
企業人に求められるスキルとしては、自社事業の収益モデルをはじめ、他社との関係性を理解する能力が必要です。
経営陣 | ・自社の成長に必要な情報を収集し、事業を成長させるために必要なプランの策定・修正ができる能力。 |
管理職 | ・自社が利益を得る仕組みとビジネスに関する法的な規制を理解したうえで業界の動向を見極め、会社が実施するべき事項を提案できる能力。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・自社の事業が利益を得る仕組みと関連する法律を理解し、自社の強みや弱みを理解する能力。 |
法務に携わるうえでは、以下のような知識・スキルを備えておくことが必要です。
法務に携わるうえで身につけるべき能力
法務に携わるうえでは、以下のような知識・スキルを備えておくことが必要です。
法律に関する理解
企業法務を担当する場合には、自社が展開する事業に関する法律をはじめ、法務担当者としてもつべき法律への理解が必要です。
経営陣 | ・法務を遵守した経営のため、弁護士をはじめとする社外の優秀な人材とネットワークを構築する能力。 ・法務の必要な知識を従業員に教えられる能力。 |
管理職 | ・関連する法律がしっかり守れる体制の整備・強化を図り、必要に応じて経営陣に提言する能力。 ・法令遵守の体制づくりで必要に応じて、分野ごとに専門家を立てる体制づくりができる能力。 ・自社に大きな影響を及ぼす法的な分野への理解と、必要に応じて経営に対し意見を述べられる能力。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・自社の事業に適用される法律・法令・業界ルールなどをふまえ、適切な社内ルールの制定や法的な面で必要な対策を提案できる。 |
情報収集能力と分析力
企業法務では、法に関するリスクマネジメントが必要です。収集した情報を法律にあてはめ、リスクが大きいか判断しなければなりません。加えて、情報を収集する際もITの活用や聞き込み調査などをおこない、しっかりと事実を把握する必要があります。
経営陣 | ・経営に必要な法に関する知識を定期的に収集する能力。 ・法令を遵守しつつ、経営・会計・税務などについて、適切な経営判断ができる能力。 ・そのほか会社の経営に有益な情報を必要に応じて収集・分析できる能力。 |
管理職 | ・グローバルな観点を含め、自社に関わる重要な法律・規制・トレンドに関する情報を適時収集できる能力。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・リサーチすべき事実を把握し、必要となる情報を収集できる能力。 ・収集した情報や自身の経験にもとづき、 自社が解決すべき法的な問題・課題を分析できる能力。 |
文章力
企業では文章によって回答・指示を出すケースがあることから、法務に携わる者には文章力も求められます。
経営陣 | ・企業法務に必要な知識について、文書を活用しながら従業員に指導・教えられる能力。 |
管理職 | ・会社に大きく影響する法的な分野について、必要に応じて文書も活用しながら経営陣へ発信・ 解説・注意喚起をおこなえる能力。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・社外に向け、求められる法的な見解を伝えられる文書が作成できる能力。 ・法律を遵守した契約書の作成ができ、ほかの部署の従業員にも契約に関する指導ができる能力。 |
法務専門家としての倫理観
法務に携わる者には、専門家として倫理観のある行動・思考・言動も求められます。
経営陣 | ・法的なリスクに対して、様々な手段を講じて防止・抑止を図れる。 ・誠実さ(インテグリティ)のある組織づくりを実施できる。 ・従業員の規範となるような、誠実さ(インテグリティ)のある行動を自ら率先して実行できる。 |
管理職 | ・リスクがある事項について、事実関係を調査し、経営陣に指摘・提言ができる。 ・誠実さ(インテグリティ)のある行動を実行でき、社内へ浸透させる活動のリーダーシップがとれる。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・企業倫理に関するリスクについて、自分で判断できる。 ・倫理に反するような事項を調査し、問題があれば関係者に指摘または是正を求められる。 |
業務を円滑に進めるうえで必要な能力
法務に携わる者には、業務を円滑に進めるための以下のような能力も求められます。
コミュニケーション能力
法務部には、他の部署と連携して業務を進めるためのコミュニケーション能力が必要です。
経営陣 | ・部署ごとの業務を把握し、部署の管理職と連携して方針の策定・修正・変更ができる |
管理職 | ・経営陣との意思疎通を図り、お互いがもつ情報を橋渡しできる。 ・部署内における適切な報告・連絡・相談の仕組みを構築できる ・法務部に在籍する従業員が業務を遂行しやすい環境づくりができる |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・他部署との連携を図り、法的なリスク管理に必要な情報や相談を集められる。 ・法律の理解が乏しい部署に対して、適切な指導やサポートがおこなえる |
解決策の考案・提案する能力
自社が抱える課題の解決を目指すには、メリット・デメリットのバランスをとりつつ、解決策を提案できる能力が求められます。
経営陣 | ・部署ごとの業務を把握し、法問題があれば法的な観点から、解決策の提案ができる |
管理職 | ・会社の方針決定や立案に加わり、意見を述べられる。 ・法的なリスクを見極め、問題があれば組織構築に関する解決策や改革案の提案をできる。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・法的な問題や課題に対し、法律を遵守した解決策の考案・提案ができる。 |
交渉力
業務・取引をスムーズに進めるには、相手方の現状や立場を把握したうえで、納得させられる交渉力が必要です。
経営陣 | 社内外の法的な専門家と交渉しながら、自社のニーズを満たしつつ、法務リスクを抑えた体制の構築ができる。 |
管理職 | ・ほかの部署や経営陣と交渉をおこない、部署をまたいだ調整ができる。 ・社内外に対して法務部の方針や自社のビジョンを発信し、相手方と法律を遵守した適切な交渉をおこなえる。 |
企業法務に携わる部署の従業員 | ・法律の知識を活かしつつ、社内外の交渉役を担える。 ・契約内容について、相手方が納得するような説明ができる。 |
企業法務で求められるそのほかのスキル
上記のほか、企業法務では以下のようなスキルも求められます。
- クリエーション…現行法では対応できない問題点を予測して、リスクに備えるスキル
- ナビゲーション…経営方針をふまえたリスク管理の方法や戦略を提案できるスキル
- ガーディアン…違反行為の予防策と発生した場合の対処を立案するスキル
企業には、様々な法的リスクが存在します。企業法務を通じて予防・適切な対処に努めることで、リスクを最小限に抑えられるでしょう。
企業法務を充実させるなら「LegalForce」の導入もおすすめ
企業法務を充実させたいときには、業務システムを導入するのも効果的です。法務に特化したシステムを活用することで、企業法務の強化だけでなく、業務効率化も図れます。
業務システムの導入を検討するのであれば、AI契約プラットフォーム「LegalForce」の活用がおすすめです。AIによる条ずれや自動レビューなどのサポート、リスク検知機能などを使用できるため、契約業務の精度向上につながります。
「LegalForce」の機能紹介
LegalForceを活用すると、契約書を締結する際に、リスクの見落としを防ぐことができます。
特に、LegalForceは「リスク検知支援」や「リサーチ支援」ができる機能を備えており、これらは業務委託契約書のレビューの助けとなる便利な機能ですので、この機会に導入をご検討ください。
リスク検知支援
LegalForceには、契約書におけるリスクの検知を支援する機能が備わっています。
契約書ファイル(Word/PDF/画像PDFに対応)をアップロードするだけでAIが瞬時にチェック項目を表示し、リスクの見落としや必要条文の抜け漏れを防止します。審査基準は法改正にも対応しており、現在50類型以上の契約書について、利用者の立場に応じて契約書レビューをサポートいたします。
業務委託契約については、成果物なし・ありの両方のパターンに対応しているため、幅広い企業にご活用いただけます。
リサーチ支援
LegalForceには、契約書のレビュー時に必要なリサーチを支援する機能も備わっています。
キーワードを入力するだけで、自社のひな形や過去の契約書から欲しい条文を瞬時に検索し、リサーチの手間を大幅に削減します。自動レビューではチェック項目と併せて、修正時の参考となる一般的な条文例と、関連する法的な情報が表示されます。
さらに、契約書や株主総会議事録、社内規程など、弁護士が監修した700点以上のひな形を標準搭載しています。業務委託契約についても、成果物なし・ありの両方のひな形が搭載されており、Wordでダウンロードが可能です。
ナレッジ共有
LegalForceには、自社の契約ノウハウを社内全体でナレッジ共有できる機能が備わっています。
LegalForce上にアップロードした契約書などの自社ひな形は、自社専用の契約書データベースとしてご活用いただけます。検索性が高いので、閲覧したい契約書を簡単に見つけられます。
また、案件に関する情報や修正の背景を、コメントとして契約書ごとに残すことも可能です。さらに、契約書の修正履歴を見やすく管理し、後から別 の担当者が見ても交渉・修正の過程を辿ることができます
LegalForceでリスクの見落としを防止
契約書は、各企業において締結頻度が高い一方で、その内容は個別にアレンジする必要があります。きちんと契約を締結するには、法務担当者による目視のチェックと、AIツールによる機械的なチェックを併用することが効果的です。
LegalForceは契約書のレビューを、リスク検知支援・リサーチ支援などの便利な機能によってサポートいたします。幅広い契約に対応していますので、ご関心のある方はLegalForceの資料請求をご検討ください。

業務委託契約についてさらに詳しく知りたい方は、以下のダウンロード資料もご利用ください。
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まとめ
企業法務は、企業に関連する法的なリスク管理に重要なものです。スキルマップを活用し、関係者のスキルアップを図ることで、より企業法務を充実させられます。
また企業法務の強化には、「LegalForce」などの業務システムの導入も有効です。法務部の体制強化を図り、企業法務を充実させましょう。