一次産業の仕組みを変え、生産者のこだわりが正当に評価される世界を目指す

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Profile

秋元 里奈
食べチョク 代表

神奈川県相模原市の野菜農家に生まれる。 慶應義塾大学理工学部を卒業した後、2013年に株式会社ディー・エヌ・エーへ新卒入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げ、スマートフォンアプリのマーケティング責任者などを経験。 2016年11月に農業分野の課題に直面し株式会社ビビッドガーデンを創業。2017年8月にこだわり生産者が集うオンライン直売所「食べチョク」を正式リリース。リリース3年で認知度・利用率No.1の産直通販サイトに成長。2020年4月にアジアを代表する30歳未満の30人「Forbes 30 Under 30 Asia」に選出。2020年9月にTBSの報道番組「Nスタ」の水曜レギュラーコメンテーターに就任。その他、日本テレビ「スッキリ」コメンテーター、フジテレビ系列「セブンルール」、テレビ東京「カンブリア宮殿」など出演。オンオフ問わず365日24時間着ている「食べチョクTシャツ」がトレードマーク。2021年2月に初著書『365日 #Tシャツ起業家』を出版。

Sessionのポイント

コロナウイルスは、農業・漁業・畜産業などの一次産業に大きなダメージを与えました。そんななか注目を集めているのが、生産者と消費者を直接つなぐ産直通販サイト「食べチョク」です。本Sessionでは、食べチョクの運営会社であるビビッドガーデンの代表取締役社長・秋元氏に、

  • サービス開始の経緯
  • 一次産業の課題と、食べチョクによる解決策
  • 食べチョクが目指す、これからの一次産業

についてお話いただきました。

農家・漁師の産直ネット通販「食べチョク」

一次産業の仕組みを変え、生産者のこだわりが正当に評価される世界を目指す_1

「食べチョク」はWeb版のファーマーズマーケットで、最近はアプリ版もあります。農産物のみならず肉・魚・乳製品・加工品・お酒など約35,000点の“食材”をオンラインで購入できる直売所のようなサービスで、全国47都道府県の農家の方・漁師の方(約6,000軒)に、ご登録いただいています。

なぜ私がこうしたサービスを始めるようになったのか――。そのルーツは実家にあります。私の実家は、もともと農業を営んでいました。小さい頃は双子の弟と一緒に祖父の農業の手伝いをしたものです。

父も会社に勤めながら農業をしていたのですが、母からは「農業を継いではダメだ」とたびたび言われていました。「農業は天候に左右されることが多く収入も不安定になりやすい。なるべく安定した職に就いてほしい」という親心からか、「銀行員か公務員になってほしい」とも言われていました。その後、私が中学生のとき祖父が他界し、実家の農業はこのとき廃業になりました。

さて、その後の私は銀行員にも公務員にもならず、IT企業(ディー・エヌ・エー)に就職します。そして社会人3〜4年目で、実家の農業が廃業してから10年くらいの歳月が経っていたあるとき、久しぶりに実家の畑を見る機会に恵まれました。弟と遊んだキレイな畑は当然ながら、耕作放棄地になっています。そのとき私にはふとこんな思いが去来します。

なぜ農業を辞めなければいけなかったのか、なぜ農業は儲からないとされているのか——。

これが食べチョクを始めたきっかけでした。

日本の農家の9割以上が中小規模農家

日本の国土は全体的に山が多いため、ひと続きの農地を確保するのが難しく、多くの農地が細切れです。そのため日本の農家の94%は中小規模の農家に該当します。

一般的に農業の世界では、大きな農地を持っているほど機械化を進めやすく、少人数で効率よく大量生産を行えます。逆に、農地面積が少ない中小規模農家は生産効率が悪くなり、所得も低くなる傾向にあります実際、私の祖父も小規模農家で、収入はほとんどありませんでした。

こうした課題の一因となっているのが、価格の決定権と販路です。既存の流通ルートでは、形と大きさで価格が決まるため、生産者に価格の決定権はありません。

「一定品質の食材を全国へ安定供給する」という観点から考えると、それら既存の流通が「悪い」というわけではありませんし、絶対になくなってもいけません。しかし生産者の側からすると、どんなに味にこだわった食材でも価格決定権が自分たちにはないため、こだわりが価格に反映されにくいという事態につながっています。

このような一次産業の課題を背景に、私たちは生産者と消費者を直接つなぎ、「生産者が自分で価格を決められる仕組み」をつくることに挑戦しました

直売所やファーマーズマーケット、そして道の駅など、リアルの世界では生産者と消費者が直接つながる流通の仕組みが拡大していました。5年前にそのことに気づいた私は「そうした場をオンライン上につくり、そこにより多くの生産者の方に入ってきてもらいたい」と考えました。一次産業の仕組みを変え、生産者のこだわりが正当に評価される世界を目指す_2

“生産者のこだわり”が正当に評価される世界へ

こだわりの食材をつくる生産者が、消費者に直接販売できるプラットフォーム——。それが食べチョクです。食べチョクでは生産者が自分で価格を決められるため、通常の流通ルートと比較しても利益率が高く、「儲からない」課題を解決します。

一方で、多少のデメリットも存在します。通常の流通ルートでは、先述のとおり、ある程度の量をコンテナで出荷し、形や大きさで価格が決められていましたが、食べチョクでは消費者との直接的なやりとりが発生し、かつ、配送に手間がかかります。そのため食べチョクは、大規模な生産者向けのサービスというよりも「多少の手間がかかってもいいから利益を上げたい」といった思いを持つ中小規模な生産者に向けた新しい販路だと言えます。

▼「LegalForce Conference 2021」の様子は、YouTube上でも配信しています。ぜひご覧ください。

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