LegalForceでは、契約中のユーザー向けに、定期的にイベントを開催しています。
この記事では、2022年7月27日に開催した「事業部との連携を強化するための法務の仕組みづくり」の概要を紹介します。
本ユーザー会では、
■株式会社MaaS Tech Japan 森典子氏
■株式会社ショーケース 打田太一氏
に、「法務として事業部や他部門とどうやってコミュニケーションをとっているのか」「頼られる法務になるために工夫していることや仕組み化したことは何か」などをテーマにお話しいただきました。
※LegalForce/LegalForceキャビネに関する資料は、こちらからダウンロードいただけます。
目次
株式会社MaaS Tech Japanの事例
スピーカープロフィール
森 典子 氏
株式会社MaaS Tech Japan コーポレートディレクター
大学卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)へ入社。NTTコミュニケーションズにて、主に中央省庁向けのソリューション営業、広報・P R、マーケティングに従事。2019年7月にMaaS Tech Japanへジョイン。コーポレート部門にて、広報・バックオフィス業務全般を担う。
法務経験ゼロから、スタートアップ企業の一人法務に
株式会社MaaS Tech Japan(以下、MaaS Tech Japan)は2018年に創業したスタートアップ企業です。MaaS(マース:Mobility as a Service)を活用し、「企業・自治体・研究機関の皆さまが取り組む都市や地方の交通DX」を支援する事業を行っています。
バックオフィス部門の体制としては総務・労務・財務などを、役員1名・社員2名・派遣社員2名で担当し、法務は、私がほぼ一人で担当しています。(※2022年8月現在)
しかし、私のもともとの法務経験はゼロ。広報をメインとするコーポレートスタッフとしての採用でしたが、入社後、それ以外のバックオフィス業務も含めてカバーすることになり、未経験の法務に挑戦することになりました。
取り組み①|法務に相談したほうが【早い・楽・正確】な状態をつくる
法務をするなかで、他部門との連携が強く求められるのは、やはり「契約業務」です。
当社の取引先は、大企業や官公庁が中心であるため、契約審査から締結に至るまで、細やかな対応が求められます。取引先の信頼を失わないためには、法務のみならず、社員全員が、同じレベルで対応できるようにならなければなりません。
しかし先方から確認を求められた際、相談先がわからず、社員がネットで調べて回答してしまうケースもあり、契約業務対応がばらついてしまう原因になっていました。
そのため、当社では、「契約業務対応の均質化」に取り組むことにしました。
具体的には、私自身が、
- 社員からの質問やリクエストに対して“クイックレスポンス”をすること
- 根拠を持って回答すること
を意識するようにしました。
その結果、「自分で調べるよりも法務に相談したほうが、【 早い・楽・正確 】」という状態をつくることができ、契約業務対応の均質化を実現できるようになってきました。
取り組み②|リーガルチェックに対する社員の精神的障壁を下げる
もうひとつの取り組みは、「契約リスクの最小化」を図るべく、すべての契約書について必ずリーガルチェックを行うことを徹底しようとしたことです。
ただ、一般的に、業務フローを整備しようとすると、社員は「リーガルチェックを依頼するのが面倒だ…」「工程が一つ増えて、手間と時間がかかる…」と、ネガティブになりがちです。そこで、
- リーガルチェック依頼のワークフローをできる限りシンプルにする
- リーガルチェック時は、リスクの指摘にプラスして、必ず代替案を出す
- 必要があれば、取引先とのやりとりも法務が引き継ぐ
といったかたちで、リーガルチェックに対する社員の精神的障壁を下げるような工夫を行いました。
この業務フローで業務を進めるようになってから3か月くらい経過していますが、まだ完成はしておらず、使いづらいところや足りないところは、フィードバックをもらいながらブラッシュアップしていっています。
取り組み③|法的根拠のある回答をクイックに行う
こうした取り組みに際しフル活用しているのがLegalForceで、たとえば以下のような使い方をしています。
- 700点(※2022年8月現在)ほど搭載されているLegalForceひな形のなかから、状況に応じて最適なひな形を選び、契約書を効率よく作成する
- 事業部から契約書について問い合わせがあった際、LegalForce内の解説記事や自動レビューの関連情報・サンプル条文などを活用して、法的根拠のある返信を行う
また、リーガルチェック依頼のワークフローには、「案件管理機能」を活用しています。社員は取引先からのメールを転送するだけで依頼ができ、案件の経緯などもLegalForce内に集約されていくので、社員・法務の双方にとって非常に便利です。
このようなかたちで、社員からの相談や依頼に対して、「クイックに、根拠を持って回答する」ことで、社員に信頼してもらえるようになりました。昔は月2~3件だったリーガルチェックが、10件を超えることもあります。件数を増やすのが目的ではありませんが、契約リスクの低減に役立っていると思います。
株式会社ショーケースの事例
スピーカープロフィール
打田 太一 氏
株式会社ショーケース 総務部
2019年12月株式会社ショーケースに入社。知財管理・M&A等を含めた法務業務全般を行いながら、従業員のエンゲージメント向上施策を行う総務業務だけでなく、部署を超えての経営管理業務等にも幅広く挑戦。業務効率化を行いながら、依頼者の満足度向上も見据え、会社の理念である相手の期待を超える「おもてなし」法務を追求し続けている。
総務・経営管理業務もカバーする「一人法務」
株式会社ショーケース(以下、ショーケース)は、「おもてなしテクノロジーで人を幸せに」をコアバリューとして掲げている会社です。当社の主力製品としては、
- 「ナビキャスト」シリーズ:入力フォームを最適化することにより、CV率を改善するサービス
- 「Pro Tech」シリーズ:Webサイトの不正ログインやなりすまし、入力ミスによる機会損失防止やセキュリティ対策に特化したサービス
などがあります。
法務担当は私のみですが、契約審査や知財管理、M&Aといった法務系の業務以外にも、総務・経営管理系の業務も担っています。
「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない」をモットーに、会社のためになることは法務外のことでも積極的に取り組んでいます。
契約業務は、さまざまな人と関われるチャンスですが、その他の庶務も、人間力を成長させる機会ととらえています。法務として大切なのは、「法務」としてのプライドは持ちつつ、事業の成長を考え続けることだと思っています。
取り組み①|秘密保持契約の締結までのフローを効率化
法務として事業部との連携の中で行った取り組みの一つ目は、「秘密保持契約の締結を効率化すること」です。
秘密保持契約は、契約自体にリスクはほとんどないものの、会社ごとに微妙にカスタマイズする必要があり、確認完了までに時間がかかっていました。また、単純に件数も多く、当社では、年間500~600件ほどありました。
当社では、秘密保持契約のひな形を複数用意し、状況に応じて選べるようにしました。また、社員に対し、秘密保持契約についての教育も行うことで、業務効率化を図りました。
取り組み②|社員からのリーガルチェック依頼を効率化
また、二つ目の取り組みとして、「社員からのリーガルチェック依頼の効率化」も行いました。
具体的には、Slackでリーガルチェック依頼の専用チャンネル(リーガルチェックをおねがい!)をつくり、一元管理を目指しました。
社員は、Slackで依頼する際、
- 契約書名
- 契約の相手方
- 一次レビューの希望期日
- 電子締結の可否
- ひな形が当社のものか、契約先のものか
などを入力します。
以前は、依頼後にこれらの情報を個別に確認していましたが、依頼と同時に入力してもらうことで対応しやすくなりました。
取り組み③|法務のポータルサイトで情報発信
また、事業部からすると、法務へのリーガルチェック依頼は頻繁に行うものではないので、一度やっても忘れてしまいます。
そこで、法務のポータルサイトに「リーガルチェックの流れ」「よくある質問(約30個)」を掲載しました。これにより、事業部からの問い合わせ件数が1か月あたりで33%ほど減り、業務効率化につながりました。
そのほか、社内のできごとに関心を持ち、社員と仲良くなることも意識しています。たとえばSlackでは、絵文字を積極的に活用したり、社員の投稿に率先してリアクションしたりすることで、「打田さんはいつも反応してくれるから相談しやすい」という印象をもってもらえるようにしています。
事業部との連携を強めるためのアイデアを考えるコツ
事業部との連携を強化するためには、自社にあったアイデアを考える必要があります。アイデアのヒントは会社のなかにいっぱい転がっているので、自分で情報を取りに行くのがおすすめです。
経営陣や事業部が「どこで悩んでいるのか」「どこに不安があるのか」をヒアリングできると、具体的なアイデアが浮かんでくると思います。
ただ、普段の業務にプラスして、事業部との連携の強化を図ろうとすると、仕事が忙しくなる場合があります。
私の場合、キャパを超えそうになる場合は、緊急度と重要度をもとに優先順位をつけて対応します。ただし、事業部に対しては「今は難しいので、後回しになってしまいます」と伝え一次対応だけは絶対に怠らないようにしています。
私が2019年に入社した段階では、事業部の間で、法務という存在は認知されていませんでした。しかし、事業部との連携の強化を図ろうとするなかで、法務への依頼や相談は増加し、一定の認知を獲得できてきていると感じています。
法務としては忙しくなることもありますが、法務を頼ってくれるというのは大変ありがたいことなので、常に、感謝の気持ちをもつようにしています。
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